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根拠に基づく将来予測
オープンデータ活用講座

9.ビジネスで活かすオープンデータ(3)

ビジネスにおけるオープンデータの活用例

オープンデータを活用したビジネスには、2つの考え方があります。一つは、オープンデータビジネスとしてオープンデータを活用する考え方。もう一つは、自社業務で業務改善や業務改革・商品開発などでオープンデータを活用する考え方です。
前者は、国民へのサービス向上の一環として、政府(内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室・経済産業省・総務省など)でも議論され、自治体なども取り組んでいます。
しかし、後者は議論されることも少なく、企業内では、オープンデータの活用方法を知らない方が多く存在すると思われます。
このため今回の活用塾では、前者については概要だけを紹介し、後者について掘り下げて説明します。

オープンデータビジネス

オープンデータビジネスの分類法や事例について、2015年11月11日に開催された「第51回JIPDECセミナー 新たなデータ活用によるビジネスの未来」で「一般社団法人リンクデータ 代表理事 下山 紗代子様」が講演された「オープンデータ活用事例から見出す新たなビジネスの可能性」から「オープンデータを使ったビジネス事例」の要約を紹介させて頂きます。

【ビジネス規模】

日本では年間1800~3500億円

【分類法・事例】

※一般社団法人 オープ ン・コーポレイツ・ジャパン 東 富彦氏による定義

① 付加価値型
既存ビジネスの価値向上にオープンデータを利用するもの。
<事例>
・carehome.co.uk(英国)
介護施設の評価情報を提供することで情報の公平性を担保
・Zaim-わたしの給付金(日本)
居住地域や家族構成、家計簿記録から「もらえる可能性がある給付金、手当・控除」情報を提供

② 新価値創造型
多様なデータの掛け合わせにより未来予想を行うもの。
新たに開発されるアルゴリズムや分析モデルを価値の源泉とする。
<事例>
・insectforecast(米国の個人が運営)
害虫発生状況を監視し、害虫駆除のための薬剤散布タイミングを提供
(バイオ化学メーカー「モンサント」がスポンサー)
・不動産価値測定 GEEO
路線価、国勢調査などをもとに不動産賃料の推定、不動産価 値を算出。基本機能は無料、プロフェッショナルサービスは有料

③ プラットフォーム型
特定領域のデータを大量に集め、プラットフォーム化する。
収集データを利用しやすく提供することが第一の価値創造。
その後データ利用状況などの分析により更なる価値を生み出す。
<事例>
・マイ広報紙
広報紙データを収集し、各地の広報紙を自由にネット上で閲覧可能とするサービス
・ミルモ(WELMO社)
散在する介護情報を集約し、福祉サービスの選択を支援

④ リリース&キャッチ型
オープンデータという手法自体をビジネスに活用するモデル
<事例>
・Goldcorp社(カナダ)
自社の地質データを公開し金鉱脈がどこにあるか分析を公募する「ゴールドコープチャレンジ」を開催し、幅広い専門家から分析結果を得ることにより倒産危機を回避し、大手企業に成長
・ブラックジャックによろしく(日本)
著作書籍をオープン化することにより、結果的にその他の著作物の売り上げも増大するというケースも見られた(広告的にオープンデー タ化を行うというビジネスモデル)

ビジネス現場でのオープンデータの活用法

ビジネスの現場では、業務目的達成のため日々ビジネス活動を行っています。業務目的を達成するためには、業務目的に沿った情報を収集する必要があります。そのような情報は、企業自身でも収集しています(例えば、顧客情報・製品情報・POS情報・社員情報 等々)。
このような情報は、費用に比例して多く収集できますが、企業としては限界があります。業務目的に沿った情報を、あまり費用をかけずに収集できる情報のひとつとして、オープンデータがあります。
このため、オープンデータを活用する場合は、どのような目的で使用するのかを明確にし、その目的に適合したオープンデータを探す必要があります。

利用できるオープンデータとしては、次のようなものがあります。

① 政府や自治体などが公表しているもの
データカタログサイト(DATA.GO.JP)
政府統計の総合窓口(e-Stat)
・各省庁や自治体のHP
気象庁(気象情報) 等々

② 民間企業が公表しているもの(有料が多い)
・新聞や雑誌の記事(各新聞社や雑誌社)
日経テレコン(記事情報・企業情報・業界情報・人事情報・海外情報)
帝国データバンク(企業情報)
東京商工リサーチ(企業情報) 等々

尚、無料で統計データを公開している企業の名前やURLなどを以下に提示します。
1) 統計レポート総合データベース

2) 市場調査・消費者意識調査を公開しているサイト

3) IT系のリサーチ結果を公表しているサイト
統計データサイト14選 - LISKUL (https://liskul.com/wm-statistics-8577) より引用

目的に適合したオープンデータを活用する方法としては、次のようなものがあります。

① 直接読み取り型
オープンデータを、形を変えずに読み取り分析する方法で、前回紹介した「訪日外国人消費動向調査」の分析が該当します。

② 形式変換型
提供されたオープンデータの形を変えて活用する方法で、緯度経度や住所などのデータを地図にマッピングして活用する方法などが一例です。すでに自治体やe-Statなどでは、結果をオープンデータとして公開しているものもあります。

③ データ変換型
提供されたオープンデータを元にして、新しいデータを作る方法で、将来予測などがこれにあたります。

④ データ比較型
組織で集計したデータを、国などの公共のオープンデータと比較する方法で、どのような違いがあるのかを見極めることができます。

ビジネス現場でのオープンデータの活用例

ビジネスの拡大は、企業にとって非常に重要な問題で、このためにいろいろな調査を行っています。企業では、マーケティングとしてこれらの活動を行っており、マーケティングの中でオープンデータが活用できる可能性があります。
マーケティングの具体例としては、
①市場分析
②ターゲットユーザの設定
③商品・サービスの設計
④価格帯の決定
⑤届け方の決定
⑥どの様に認知してもらうかを考える
などがあり、より多くの人に商品やサービスを届け、売上や収益を伸ばすことを目的として活動を行っています。

【出店計画】

新しく出店しようとする場合は、出店する地域の特徴を把握する必要があります。例えば、小売業の場合、一度出店すると簡単に移転はできず、その地域で商売を続けていかなければなりません。
出店時に、全国規模で調査したデータを元に商品を取り揃えても成功する確率は低くなります。出店する地域の人口構成や所得・家族構成などに応じた商品を取り揃えることにより、成功する確率は高くなります。
このように、その地域に特化した売れる仕組みを作るマーケティング手法をエリアマーケティングと言います。エリアマーケティングでは、いろいろな視点から考察し、計画を立てる必要があります。特に、その地域の市場特性(市場規模・成長性・人口構成・家族構成など)は重要です。

【事例:介護施設の新設】

 
① 目的:
新しく横浜市に介護施設を開設したいと考えている事業者が、どこに開設すると良いかを決定したい。
② 目的実現のための考え方:
65歳の人口が多くかつ介護施設数の少ない地域が候補地となります。
③ 収集したいデータ:
・地区別の65歳以上の人口
・地区別の介護施設数
④ データ収集方法:
・地区別の65歳以上の人口については、「国勢調査」から得られます。
・介護施設数は、「経済センサス(活動調査)」から得られます。
・「e-Stat」に存在しますが、表形式のデータとして得られても地域の関連性(隣の地域との比較)を知ることは、各地域がどこにあるかを知らない限りできません。このため、データを地図上にマッピングします。この機能は、「e-Stat」の「統計GIS」を使用すると実現できます。以下、「統計GIS」を使用して介護施設の開設候補地を探します。

【統計GISでの探索】

  • e-Stat」のトップ画面から「地図 - 地図上に統計データを表示(統計GIS)」をクリックします。
  • 次画面で「地図で見る統計(jSTAT MAP)」をクリックすると、次の画面が表示されます。
    この時点で、表示したい地域を選びます。今回は、横浜市なので、地図をドラッグしながら横浜市の方へ移動したり、全体が入るよう地図右下の「+-」を使用して、集計する地域を表示させます。
  • 上部のメニューの「統計地図作成」(図の赤で囲まれている箇所)をクリックするとサブメニューが表示されるので、「統計グラフ作成」をクリックします。
  • 次のような画面が表示されるので、必要な情報を選択します。
    今回は、65歳以上の人口なので、「統計データ」タブの「統計調査(集計)」で、次の内容を選択します。
    ・調査名 :国勢調査
    ・年   :2015年(最新の調査)
    ・集計単位:5次メッシュ(250mメッシュ)
    ここまで選択すると、「統計表」の欄に、次の内容が表示されます。
    ・その1 人口等基本集計に関する事項
    ・その2 人口移動集計及び就業状態等基本集計に関する事項
    ・その3 従業地・通学地集計及び世帯構造等基本集計に関する事項
    この項目は、集計分類を表しており、今回は人口なので「その1」を選択します。
    「その1 人口等基本集計に関する事項」
    「指標」の欄に、どのような人口を集計したいのかが表示されますので、次のような操作を行います。
    ①「65歳以上総人口」をチェック(クリック)します。
     (表示部の右上の灰色の部分をクリックしながら項目を下へ移動)
    ②「指標選択」をクリックします。
    ③次のような表示に替わりますので、下部の「次へ」をクリックします。
  • 「統計グラフ作成」画面が表示されますので、次のような操作を行います。
    ①「集計単位」が「メッシュ」にチェックされている事を確認します。
    ②「集計開始」ボタンをクリックします。(下図参照)
    「統計データを検索しています」と表示されます。
    処理が終わると、「処理を終了しました」とのメッセージが表示されます。
    「閉じる」をクリックします。
    統計データの検索結果が表示されます。今回の結果は次の通りです。
  • この地図と比較する施設の地図を作成する必要があります。
    ①地図上部にある「サブ地図」(赤い部分)をクリックします。
    ②左側に同じ縮尺で新しい地図が表示されますので、3~5の操作を行います。
     なお、今回は施設数なので、次のような内容を選択して集計を行います。
    ・調査名 :経済センサス-活動調査
    ・年   :2016年(再診の調査)
    ・集計単位:4次メッシュ(500mメッシュ)
    ・統計表 :産業(大分類)別事業所数及び従業者数
    ・指標  :事業所数-P医療,福祉
    結果は次の通りです。
  • これで準備ができましたので、その地域が高齢者が多く、施設が少ないかを調べます。
    調べるにあたっては、サブ画面を移動あるいは拡大・縮小することにより調べます。
    高齢者の多い地区として、黄金町付近と港南台付近が挙げられます。
    両地区を表示させると、次のようになります。

    (黄金町付近)

    (港南台付近)
    これらを比較すると、黄金町付近は、高齢者の人口も多いが施設も多くあることが分かります。また、港南台付近は、高齢者は多いけれど、施設が少ないことが分かります。
    以上より、港南台の方が施設を新設するには良いことが分かります。
    しかし、施設に関しては、医療施設も入っていることや、今回の分析は統計上の結論で、最終結論を出すためには現地調査などを実施して決定する必要があります。
    なお、「統計GIS」では、メッシュ表示できる調査は、次の通りです。
    ・国勢調査
    ・事業所・企業統計
    ・経済センサス-基礎調査
    ・経済センサス-活動調査
    ・農林業センサス


【データ比較型の活用法】

調査などで得られたデータとオープンデータを比較することで、得られたデータの特性などを分析するオープンデータの活用法があります。例えば、小学校で生徒の身長・体重などを測定し、全国や県のデータを比較することにより、その小学校の生徒の状況が把握できます。


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未来を作る意思決定に。新世代統計集計システム【Z-Adam】