ビジネス現場でのオープンデータの活用例
ビジネスの拡大は、企業にとって非常に重要な問題で、このためにいろいろな調査を行っています。企業では、マーケティングとしてこれらの活動を行っており、マーケティングの中でオープンデータが活用できる可能性があります。
マーケティングの具体例としては、
①市場分析
②ターゲットユーザの設定
③商品・サービスの設計
④価格帯の決定
⑤届け方の決定
⑥どの様に認知してもらうかを考える
などがあり、より多くの人に商品やサービスを届け、売上や収益を伸ばすことを目的として活動を行っています。
【出店計画】
新しく出店しようとする場合は、出店する地域の特徴を把握する必要があります。例えば、小売業の場合、一度出店すると簡単に移転はできず、その地域で商売を続けていかなければなりません。
出店時に、全国規模で調査したデータを元に商品を取り揃えても成功する確率は低くなります。出店する地域の人口構成や所得・家族構成などに応じた商品を取り揃えることにより、成功する確率は高くなります。
このように、その地域に特化した売れる仕組みを作るマーケティング手法をエリアマーケティングと言います。エリアマーケティングでは、いろいろな視点から考察し、計画を立てる必要があります。特に、その地域の市場特性(市場規模・成長性・人口構成・家族構成など)は重要です。
【事例:介護施設の新設】
① 目的:
新しく横浜市に介護施設を開設したいと考えている事業者が、どこに開設すると良いかを決定したい。
② 目的実現のための考え方:
65歳の人口が多くかつ介護施設数の少ない地域が候補地となります。
③ 収集したいデータ:
・地区別の65歳以上の人口
・地区別の介護施設数
④ データ収集方法:
・地区別の65歳以上の人口については、「
国勢調査」から得られます。
・介護施設数は、「
経済センサス(活動調査)」から得られます。
・「
e-Stat」に存在しますが、表形式のデータとして得られても地域の関連性(隣の地域との比較)を知ることは、各地域がどこにあるかを知らない限りできません。このため、データを地図上にマッピングします。この機能は、「
e-Stat」の「
統計GIS」を使用すると実現できます。以下、「
統計GIS」を使用して介護施設の開設候補地を探します。
【統計GISでの探索】
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「e-Stat」のトップ画面から「地図 - 地図上に統計データを表示(統計GIS)」をクリックします。
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次画面で「地図で見る統計(jSTAT MAP)」をクリックすると、次の画面が表示されます。
この時点で、表示したい地域を選びます。今回は、横浜市なので、地図をドラッグしながら横浜市の方へ移動したり、全体が入るよう地図右下の「+-」を使用して、集計する地域を表示させます。
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上部のメニューの「統計地図作成」(図の赤で囲まれている箇所)をクリックするとサブメニューが表示されるので、「統計グラフ作成」をクリックします。
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次のような画面が表示されるので、必要な情報を選択します。
今回は、65歳以上の人口なので、「統計データ」タブの「統計調査(集計)」で、次の内容を選択します。
・調査名 :国勢調査
・年 :2015年(最新の調査)
・集計単位:5次メッシュ(250mメッシュ)
ここまで選択すると、「統計表」の欄に、次の内容が表示されます。
・その1 人口等基本集計に関する事項
・その2 人口移動集計及び就業状態等基本集計に関する事項
・その3 従業地・通学地集計及び世帯構造等基本集計に関する事項
この項目は、集計分類を表しており、今回は人口なので「その1」を選択します。
「その1 人口等基本集計に関する事項」
「指標」の欄に、どのような人口を集計したいのかが表示されますので、次のような操作を行います。
①「65歳以上総人口」をチェック(クリック)します。
(表示部の右上の灰色の部分をクリックしながら項目を下へ移動)
②「指標選択」をクリックします。
③次のような表示に替わりますので、下部の「次へ」をクリックします。
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「統計グラフ作成」画面が表示されますので、次のような操作を行います。
①「集計単位」が「メッシュ」にチェックされている事を確認します。
②「集計開始」ボタンをクリックします。(下図参照)
「統計データを検索しています」と表示されます。
処理が終わると、「処理を終了しました」とのメッセージが表示されます。
「閉じる」をクリックします。
統計データの検索結果が表示されます。今回の結果は次の通りです。
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この地図と比較する施設の地図を作成する必要があります。
①地図上部にある「サブ地図」(赤い部分)をクリックします。
②左側に同じ縮尺で新しい地図が表示されますので、3~5の操作を行います。
なお、今回は施設数なので、次のような内容を選択して集計を行います。
・調査名 :経済センサス-活動調査
・年 :2016年(再診の調査)
・集計単位:4次メッシュ(500mメッシュ)
・統計表 :産業(大分類)別事業所数及び従業者数
・指標 :事業所数-P医療,福祉
結果は次の通りです。
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これで準備ができましたので、その地域が高齢者が多く、施設が少ないかを調べます。
調べるにあたっては、サブ画面を移動あるいは拡大・縮小することにより調べます。
高齢者の多い地区として、黄金町付近と港南台付近が挙げられます。
両地区を表示させると、次のようになります。
(黄金町付近)
(港南台付近)
これらを比較すると、黄金町付近は、高齢者の人口も多いが施設も多くあることが分かります。また、港南台付近は、高齢者は多いけれど、施設が少ないことが分かります。
以上より、港南台の方が施設を新設するには良いことが分かります。
しかし、施設に関しては、医療施設も入っていることや、今回の分析は統計上の結論で、最終結論を出すためには現地調査などを実施して決定する必要があります。
なお、「統計GIS」では、メッシュ表示できる調査は、次の通りです。
・国勢調査
・事業所・企業統計
・経済センサス-基礎調査
・経済センサス-活動調査
・農林業センサス
【データ比較型の活用法】
調査などで得られたデータとオープンデータを比較することで、得られたデータの特性などを分析するオープンデータの活用法があります。例えば、小学校で生徒の身長・体重などを測定し、全国や県のデータを比較することにより、その小学校の生徒の状況が把握できます。