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根拠に基づく将来予測
オープンデータ活用講座

8.ビジネスで活かすオープンデータ(2)

人口を使用したデータ分析

人口を使用したデータ分析は、「6.医療費の将来予測」で人口当たりの割合から推計する手法として紹介しました。 年齢別の数量が示されているものであれば、この手法を適用し、将来の値を推測できる可能性があります。
4.人口統計」で平成28年の北海道と鳥取県の介護認定者数の比較を行いましたが、ここで使用したデータでは、年齢階級別に認定者数が示されており、人口当たりの認定者数を求めることができます。 この値と、将来の推計人口を利用すると将来の介護認定者数を推計が行えます。

データの入手

人口データの入手

人口データは、「e-Stat」の「分野」から「人口・世帯」-「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査」で「2019年」-「【総計】都道府県別年齢階級別人口」より入手できます。

介護認定者数のデータの入手

4.人口統計」で使用したデータは、e-Statにある「介護保険事業状況報告」で最も新しい平成28年度末現在のデータでした。 しかし、現状では平成30年のデータが存在しており、より正確な予測を行うために、今回は「介護給付費等実態統計(旧:介護給付費等実態調査)」の「介護給付費等実態統計」-「2018年度」を使用します。
月次のデータなので12ヶ月分ありますが、人口のデータが平成31年1月1日現在のデータなので、12月のデータを使用します。 ただし「介護給付費等実態統計」での介護認定者数は、審査月の前月(サービス提供月)中に受給者台帳に登録されているものであり、審査月で登録されているので、ここでは平成31年1月のデータの「認定者数,要介護(要支援)状態区分・性・年齢階級・都道府県別」を使用します。

介護認定者数は、以下のようなデータです。

将来の推定介護認定者数

今回は、介護認定者数の将来推計により、国や自治体がどの様な政策を実施しなければならないかを検討する目的で分析を行います。 すべての自治体についてExcelで分析を行うと膨大な分析になるため、自治体を北海道に限定します。
最初に年齢別の人口に対する介護認定者数の割合を求めるので、年齢階級や単位を共通化する必要があります。 いずれも介護認定者数の方がデータの粒度が粗いので、人口のデータを介護認定者数に合わせます。
結果は以下の通りです。
この結果を元に、人口に対する介護認定者数の割合を算出します。結果は以下の通りです。
将来の推計人口については、「国立社会保障・人口問題研究所」が、平成27年国勢調査の確定数が公表されたことを受けて、これを出発点とする全国人口推計(日本の将来推計人口)を行い、 平成29年4月10日にその結果を公表しました。 全国および県・市町村別のデータがありますが、いずれも5歳の年齢階級別の集計です。
しかし、県・市町村別のデータは、90歳以上はまとめられています。 そのため、北海道については、90歳以上として介護認定者数・人口・人口当たりの介護認定者の割合をまとめ直す必要があります。 これらを行い、将来の推定介護認定者数を算出してみます。
結果は以下の通りです。

将来の推定介護認定者数

予測値の分類

得られた予測値を、容易に表やグラフ化するために、ピボットテーブルを利用します。
これを実現するために、予測値を以下の項目で分類します。

地域 全国、北海道
性別 男、女
認定年 2018年、2020年、2025年、2030年、2035年、2040年、2045年
サービス区分 要支援1・2、要介護1~5
年齢区分 40~64歳、65~69歳、70~74歳、75~79歳、80~84歳、85~89歳、90歳以上
認定者数 予測値

尚、全国では年齢区分が90~94歳、95歳以上となっているので、その2区分の合計を90歳以上とします。 このように作成したデータを以下に示します。
このデータを用い、以下の集計を行います。
・認定者数の推移
・年齢階級別認定者数の推移
・サービス区分ごとの認定者数の推移

集計結果は以下の通りです。


【全国】


① 認定者数の推移

認定者数は女が男の2倍強あります。これは、女性の平均寿命が男性より長く、高齢者が多いためだと推測されます。
認定者数は年々増加していますが、2045年は全体で微減しています。これは、人口減少によるものです。
認定者の40歳以上の人口に対する割合も増加していますが、あまり多くないように思われます。これは、40歳~64歳の人口が40歳以上の人口の半分程度であるにも関わらず、認定者数が非常に少ないのが原因です。
上記と同様な集計を65歳以上で行うと以下のようになり、明らかに割合が多くなっているのが判ります。

② 年齢階級別認定者数の推移

年齢階級別の認定者数は、ほぼ年齢が高くなれば認定者も多くなる傾向があります。
2020年の70~74歳の高齢者は、戦後のベビーブーム時に生まれており、人口は多くなっています。そのため、この年齢の認定者数も多くなると予想されます。
実際に、70~74歳の認定者数の推移を調べると、2020年が最多であることが分かります。
さらに5年後(2025年)には、その高齢者が75~79歳になり、やはりこの年の認定者数が最多になっています。これが90歳まで続きます。
これは、将来、認定者の高齢化が進行することを示しています。
2018年には認定者6792.7千人のうち、90歳以上が1697.8千人で、全体に対する割合が25.0%であるのに対し、2040年には認定者9997.4千人のうち、90歳以上が4213.5千人で、全体に対する割合が42.1%となり、明らかに増加しています。
男女別では、以下の表になります。
傾向は、それぞれ全体(男女計)の傾向と同じです。
しかし、男女で比較すると70歳以下では男の認定者が多いですが、70歳以上では女の認定者が多くなり、高齢になるほどその差が大きくなります。
これも、平均寿命の長さによるものだと想定できます。


③ サービス区分ごとの認定者数の推移

すべての年で、要介護1・要介護2の認定者数が多く(1位・2位)で要介護5が最小となっています。 要支援1・要支援2、および要介護3・要介護4は、要介護2と要介護5の間にありますが、要支援に関しては、2035年から割合が減少しています。
これは、人口減少と高齢化進行により、相対的に要介護者が多くなることを示しています。
男女別では、以下の表になります。

男女とも要介護1・要介護2がそれぞれ1位2位となっており、要介護5が最小となっています。特に女は、2045年には要支援1と要介護5がほぼ同数となっています。男は、要支援1が4位となっています。これは女性の高齢人口が多いこと(女性の長寿化)を示しています。



【北海道】


① 認定者数の推移

全国と比較すると、認定者の割合は2~3%程度多くなっています。人口や認定者数の年別の変化も同じような傾向があるので、北海道はもともとの高齢化率が全国より高く、これが続くため、認定者の割合が多くなっています。


② 年齢階級別認定者数の推移

高齢になるほど認定者数が増加しています。また、2020年に70~74歳の世代が年を経るごとに最大となっていることも分かります。全国の傾向とほぼ一致していることがわかります。
男女別では以下の通りです。
全国と同様に、69歳まではほぼ男の認定者が多く、70歳以上では女の認定者が多くなっており、高齢になるほどその差が広がっています。


③ サービス区分ごとの認定者数の推移

全国と比較すると、要介護1が1位で要介護5が最下位は同じですが、他は少々違っています。特に要支援1と要支援2が大幅に違っておりその影響で要支援2~4までが違っています。
これをもっと分かりやすくグラフ化すると以下のようになります。
この違いは、地域の高齢者の特性(介護にかける時間が少ない老人が多いなど)による可能性もあります。また、自治体により方向性が違うための可能性もあります。現状では、情報が少ないため原因は不明です。
男女別では、以下のようになります。
女は、北海道男女計とほぼ同じ傾向を示しています。
男は、似たような傾向ですが、要介護2が2018年より2位で推移している所が違います。


【結論】


日本の少子高齢化が進行する中、介護認定者は増加する傾向があり、特に団塊の世代が90歳になるまでは確実に増加すると思われます。
そのため、介護認定者を増加させない或いは認定者の介護度を上げない施策が必要になり、我々も元気で暮らすためにはどうしたらよいのかを考えながら行動する必要があります。
また、地域ごとのサービス区分による認定者数の違いは、原因を見極め対処する必要があり、自治体などで考える必要があります。


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