ビッグデータ分析・活用は
「目的」ではありません。
問題解決のための「手段」です
ビッグデータの分析・活用を始める前に、ひとつ確かめておきべきことがあります。それは「目的」です。他社がやっているから、新技術だから、といった動機で始めてしまっては、長続きしないでしょう。データ分析は、たいてい何らかの問題を解決するための、あくまで「手段」として用いられますが、ビッグデータも同様です。
御社の何が問題なのか、それはビッグデータで解決できるのか、どういう成果が上がれば解決とみなすのか。なぜビッグデータを用いるのか、という「目的」を事前にはっきり決めておくとよいでしょう。
PDCAなら聞いたことあるが・・・
「PPDACサイクル」とは何?
ごぞんじPDCAサイクルは、戦後日本の品質管理で用いられてきた管理手法で、Plan(計画)-Do(実行)-Check(評価)-Act(改善)という4段階からなります。PPDACサイクルとは、このPDCAを基本にしており、現代のような成熟したデータ社会における問題解決のためのフレームワークとして活用されています。Problem(問題)-Plan(計画)-Data(データ収集)-Analysis(分析)-Conclusion(結論)の5段階からなり、PDCAサイクル同様、各フェーズを循環させて繰り返すことで成果を高めることができます。
PPDACサイクルの特徴は、データを活用することから、時間をかけてサイクルを回すのではなく、短時間で実行する点にあります。完璧ではなくとも、仮説的な結論をいったん出して、その結論から次の問題点を発見するという流れを作っていきます。
例えば、PPDACサイクルを
コンビニにあてはめると・・・
こうなります。
① Problem(問題)
とあるコンビニでは、ここのところずっと売上の減少が続いています。ならば、「問題」は売上減少で、「課題」は売上向上となります。指標としては、売上高(金額)が適切でしょう。
② Plan(計画)
コンビニの店長は、課題の売上向上を実現するための施策を考えてみました。施策の方向性としては、「新規顧客を増やす」「リピーターを増やす」「1人当たりの購入点数を増やす」などがあります。
このコンビニの品揃えは、ごく一般的で、他店との違いはありません。立地は住宅地の中ですから、新規の顧客はあまり見込めそうにありません。リピーターも今以上には増えないでしょう。
そうすると、現実的な施策としては「1人当たりの購入点数を増やす」しかない、と店長は考えました。1人当たりの購買点数を増やすためには、地域住民が欲しい商品を揃えるしかありません。ならば、住民たちが欲しい商品を探るために「年代別に購入品が異なるのではないか」という仮説を立ててみます。
店に蓄積されたデータから、若年層・中年層・老人層・後期高齢者層でそれぞれ購入品に違いのあることが証明されれば、地域の年齢構成に合わせた品揃えにできます。あとは、住民に対してPRすれば、売上向上が見込めます。
店長の仮説のために必要なデータは、年齢(性別もあればなお良い)・購買日時・購入品名・個数・単価などです。これらのデータをクロス集計するだけで、分析可能です。
③ Data(データの収集)
コンビニにはPOSデータがありますが、「年齢」がすべてのPOSデータにあるかは疑問です。会員になっているお客さんなら、会員カードに年齢が登録されている可能性が高いですが、非会員のお客さんのデータには年齢がなく、使用できないかもしれません。この点には注意が必要です。
POSデータが揃った段階で、各項目に矛盾がないかのチェックは必須です。さらに、年齢を年齢階級(例:20~39 / 40~59 / 60~74 / 75以上)に分類しておくと、分析がスムーズに進みます。
④ Analysis(分析)
POSデータからは、「過去からの売上推移(全体と年齢階級別:棒グラフ)」「年齢階級別売上商品トップ10(表)」「年齢階級別 / 商品分類別売上商品トップ5(表)」「売上商品トップ10 / 売上商品トップ5の全売上高に占める割合(表)」「当該地域の年齢構成(RESAS使用:棒グラフ)」「来店者の年齢構成(棒グラフ)」などの表やグラフが出力できます。売上向上の施策に活用できるヒントを見出せれば、他にも深掘りして分析する要素は探せます。
⑤ Conclusion(結論)
店長は、地域の年齢構成を把握し、どういう年齢層が店を訪れ、どういう商品を買っていくのかを知ることができました。その分析結果を参考に、それぞれの年代に合った品揃えをすることにしました。さて、このコンビニの売上はどのくらい上がったのでしょうか…?
仮に、当初の指標よりも売上の伸びが下回ったとしても、店長が気落ちすることはありません。新たな問題を見つけ、課題を設定し、指標を決めて…とPPDACサイクルを続けて回していけばいいのです。