Lecture 06
6. 医療費の将来予測
6.医療費の将来予測
医療費の将来予測に関しては、厚生労働省の『社会保障の給付と負担の見通し』や平成20年の社会保障国民会議における『医療・介護費用のシミュレーション』で示された手法が、将来のサービス需要やそれに対するマンパワーなどについて総合的なシミュレーションが行えます。
基本的な考え方は、次の通りです。
まず、「病院・一般診療所」の「入院・外来別」に「患者数(延べ日数)」を求め、これに1日あたりの「単価」をかけます。使用するデータは、次の通りです。
基本的な考え方は、次の通りです。
「費用総額」=「需要/供給(サービスごとの利用者数/提供体制等)」×
「単価(利用者等単位当額(現状の価格水準ベース))」×
「伸び率(経済成長や医療の高度化等要因)」
これをオープンデータ活用の観点から見直すと、次のようになります。「単価(利用者等単位当額(現状の価格水準ベース))」×
「伸び率(経済成長や医療の高度化等要因)」
「費用総額」=「施設別・性別・年齢階級別の医療利用者数(延べ日数)」×
「施設・病床種類別一日あたり単価」×
「単価の伸び率」
今回は、「病院・一般診療所」の「入院・外来別」に「医療費」を求めます。「施設・病床種類別一日あたり単価」×
「単価の伸び率」
まず、「病院・一般診療所」の「入院・外来別」に「患者数(延べ日数)」を求め、これに1日あたりの「単価」をかけます。使用するデータは、次の通りです。
① 患者調査(平成29年患者調査) 上巻第11表 (e-Stat)
推計患者数,病院-一般診療所・入院-外来×性・年齢階級別
② 医療費の動向-MEDIAS-(平成29年度)(厚生労働省)
表15-1 入院 受診延日数の推移
表21-1 入院外 受診延日数の推移
③ 住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査(e-Stat)
「2017年」-「【総計】都道府県別年齢階級別人口」
④ 社会医療診療行為別統計(平成29年度) 報告書Ⅰ 医科診療 (s-Stat)
第4表 医科診療 件数・診療実日数・回数・点数,入院-入院外、
診療行為(大分類)、病院(種類別)-診療所(有床-無床)別
これらを利用して、実際に「医療費」を求めます。推計患者数,病院-一般診療所・入院-外来×性・年齢階級別
② 医療費の動向-MEDIAS-(平成29年度)(厚生労働省)
表15-1 入院 受診延日数の推移
表21-1 入院外 受診延日数の推移
③ 住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査(e-Stat)
「2017年」-「【総計】都道府県別年齢階級別人口」
④ 社会医療診療行為別統計(平成29年度) 報告書Ⅰ 医科診療 (s-Stat)
第4表 医科診療 件数・診療実日数・回数・点数,入院-入院外、
診療行為(大分類)、病院(種類別)-診療所(有床-無床)別
患者数の確認
最初に、「患者調査」の「患者数」を以下に示します。| 総数 | 病院 | 一般診療所 | ||||
| 入院 | 外来 | 入院 | 外来 | 入院 | 外来 | |
| 総数 | 1312.6 | 7191.0 | 1272.6 | 1630.0 | 39.9 | 4213.3 |
| 0歳 | 11.2 | 70.1 | 10.6 | 14.0 | 0.6 | 56.0 |
| 1~4 | 6.7 | 257.2 | 6.7 | 32.3 | 0.0 | 210.1 |
| 5~9 | 4.5 | 229.8 | 4.5 | 25.5 | 0.0 | 152.5 |
| 10~14 | 5.1 | 150.2 | 5.0 | 19.8 | 0.1 | 103.8 |
| 15~19 | 6.8 | 115.3 | 6.7 | 19.1 | 0.1 | 75.3 |
| 20~24 | 9.8 | 131.3 | 9.0 | 24.3 | 0.8 | 76.3 |
| 25~29 | 14.8 | 173.1 | 12.7 | 32.8 | 2.0 | 98.4 |
| 30~34 | 20.7 | 220.7 | 18.3 | 43.3 | 2.4 | 129.2 |
| 35~39 | 23.3 | 252.5 | 21.7 | 51.9 | 1.6 | 144.4 |
| 40~44 | 29.4 | 317.4 | 28.5 | 66.3 | 0.9 | 174.1 |
| 45~49 | 37.7 | 357.7 | 36.9 | 79.7 | 0.7 | 189.1 |
| 50~54 | 45.0 | 365.5 | 44.4 | 85.7 | 0.6 | 195.9 |
| 55~59 | 57.5 | 397.3 | 56.5 | 96.6 | 1.0 | 211.0 |
| 60~64 | 77.8 | 490.0 | 76.6 | 124.2 | 1.2 | 262.7 |
| 65~69 | 129.5 | 776.2 | 127.2 | 197.6 | 2.3 | 422.7 |
| 70~74 | 132.7 | 788.4 | 130.3 | 195.7 | 2.4 | 444.6 |
| 75~79 | 165.0 | 816.8 | 161.1 | 205.9 | 3.9 | 476.2 |
| 80~84 | 192.3 | 664.3 | 186.8 | 166.6 | 5.5 | 402.8 |
| 85~89 | 180.9 | 394.2 | 174.5 | 98.8 | 6.4 | 245.3 |
| 90歳以上 | 160.6 | 204.9 | 153.4 | 48.5 | 7.2 | 131.2 |
| 不詳 | 1.4 | 18.1 | 1.2 | 1.4 | 0.2 | 11.8 |
| 65歳以上(再掲) | 960.9 | 3644.8 | 933.3 | 913.1 | 27.6 | 2122.7 |
| 70歳以上(再掲) | 831.4 | 2868.7 | 806.1 | 715.5 | 25.3 | 1699.9 |
| 75歳以上(再掲) | 698.8 | 2080.3 | 675.8 | 519.8 | 22.9 | 1255.3 |
ここで示されている「患者数」は、1日あたりの「患者数」なので、これを年間の「患者数」にする必要があります。年次については最新の平成29年のデータを使用します。
年間患者数
「年間患者数」は、MEDIASの「医療費の動向」の中の「受診延日数」を使用します。これは「診療実日数」なので、「患者数」とみなすことができます。
| 倍率 | |
| 病院入院 | 357.2265 |
| 病院外来 | 249.9135 |
| 一般入院 | 363.6713 |
| 一般外来 | 295.1129 |
計算した結果が右表です。
この計算結果を元に、「年齢階級」ごとの「年間患者数」を求めます。
この「年間患者数」の人口に対する割合を「患者発生率」とし、これが変わらないと仮定し、将来の「患者数」を推定します。
患者数の発生率
今回は平成29年のデータを使用しているので、平成29年の人口を使用します。※e-Statの「人口・世帯分野」-「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査」-「2017年」-「【総計】都道府県別年齢階級別人口」を使用
この人口データの「年齢階級」は、0歳から100歳までの5歳刻みで、「患者調査」のものとは異なります。 このため共通化する必要があります。
共通化したものを使用した「患者発生率」は次のようになります。
これで、「施設」の「利用者数(患者数)」が推計できます。
単価と年間医療費
次に「単価」ですが、これは、「社会医療診療行為別統計(平成29年度)報告書Ⅰ 医科診療 第4表」を使用します。 表中の「病院総数」および「診療所総数」の「診療実日数」・「点数」を使って、1日あたりの費用を求めます。(下表参照) 求めた結果が次の表です。 この「単価」と平成29年の「患者数」をもとに平成29年の「医療費」を求めると次のようになります。 計算された結果と実績値を比較すると次のような「誤差率」になります。(実績値は、「MEDIAS 医療費の動向」の「表14-1 入院 医療費の推移」およびび「表19-1 入院外 医療費の推移」に記載されています) この違いが生じた原因は2つ考えられます。
1つは、「患者調査」の「患者数」が1日のものであり、実態と少し違う可能性があります。
もう1つは、「単価」に用いた「社会医療診療行為別統計」の集計が「6月審査分」のものであり、年間のものでないため「単価」が低くなった可能性があります。
いずれにしても、この「誤差率」を考慮したうえで、推計を行う必要があります。
単価の伸び率と医療費の補正
最後に推計を行う際に必要な要素として、「単価」の「伸び率」があります。これに関しては、内閣官房が平成23年にまとめた「医療・介護に係る長期推計」を参考にしました。式は次の通りです。
伸び率=1.9%+1/3×1.6%-0.1%=2.33%
伸び率 = 医療の高度化等による伸び率(A) + 経済成長に応じた改定の要素(B) - 薬・機器等に係る効率化要素(C)
※(A)医療の高度化等による伸び率:近年の動向等から年率1.9%程度と仮定
(B)経済成長に応じた改定の要素:当該年度の名目経済成長率の3分の1程度と仮定
(C)薬・機器等に係る効率化要素:年率0.1%程度と仮定
名目経済成長率:中長期の経済財政に関する試算(内閣府:平成30年7月)よりベースラインケースで1.6%と仮定
「医療費」の「将来推計」を行う前に、平成29年の計算で求めた医療費と実績値が違っていたので、その補正を行います。(B)経済成長に応じた改定の要素:当該年度の名目経済成長率の3分の1程度と仮定
(C)薬・機器等に係る効率化要素:年率0.1%程度と仮定
名目経済成長率:中長期の経済財政に関する試算(内閣府:平成30年7月)よりベースラインケースで1.6%と仮定
これには、平成29年の「年間患者数」を「誤差率」で修正し、さらにに「患者発生率」も修正します。
この修正後の「患者発生率」に推計を行う年の「推計人口」を掛け、さらに「単価」と「伸び率(経過年のべき乗)」を掛けるとその年の「推計医療費」となります。
以下に、「修正後の年間患者数」・「修正後の平成29年医療費」・「修正後の患者発生率・平成37年の推計人口」・「平成37年推計医療費」を示します。 この推計方法では、必要なデータが整備されれば、きめの細かい推計が可能です。現状のオープンデータでは、「病床種類別」や「傷病分類別」の「医療費」の「将来予測」が可能です。しかし、オープンデータだけを使用する場合は、限界があります。 この推計方法が提唱される前は、「将来人口推計」と年齢別の一人あたりの「医療費」などを利用して推計を行っていました。全体の「医療費」を推計する場合は、この方法でも十分に役立ちます。以下にこの推計方法の紹介と、実際の推計を行います。
推計方法
最初に、「年齢別(年齢階級別)」の一人あたりの「医療費」が将来も変わらないという前提で推計します。同じ「年齢(年齢階級)」の一人あたりの「医療費」が変わらないので、将来の同じ「年齢(年齢階級)」の推計人口を掛けることにより「医療費」が推計できます。 将来人口については、「国立社会保障・人口問題研究所」より公表されている「日本の将来推計人口(平成29年推計)」の「詳細結果一覧」の「出生中位(死亡中位)推計(第1-9A表)」や「日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)」の「男女・年齢(5歳)階級別の推計結果一覧」が利用可能です。一人あたりの「医療費」については、「e-Stat」の「国民医療費の(第8表)(第17表)」が利用可能です。 これらを利用すると、特別なデータ加工することなく「日本全体の医療費」の「将来推計」が可能です。しかし、県別に行う場合は、「県別年齢階級別の一人あたりの医療費」がオープンデータでは掲載されていないので、データを加工する必要があります。 「日本全体の医療費」については、次のようになります。 これをグラフ化すると次のようになります。 これからも明らかに、「医療費」の総額は2030年がピークで、それ以降は下がり気味ですが、高齢者の「医療費」が増加しています。少子高齢化の影響ですが、年金で暮らす高齢者の負担増でもあり、また、社会としても負担が増えることは明らかです。早期の対応を考える必要があります。県の医療費の将来推計
「県別の医療費推計」は、最初に「年齢(年齢階級)別の一人あたりの医療費」を推定する必要があります。これを行うためには、以下の手順で推定します。- ①県と全国の「年齢階級別一人あたりの医療費」が同じであると仮定して、「県の年齢階級別の医療費」を求めます。
- ②その合計と「国民医療費」に掲載されている「県別の医療費」の割合で、①で求めた「年齢階級別の医療費」を割り戻し、「県の年齢階級別医療費」とします。
- ③②で求めた「県の年齢階級別医療費」を県の人口で割り、「県の年齢階級別一人あたりの医療費」とします。
求めた「一人あたりの医療費」を使い、北海道の「将来の医療費」を以下に示します。
これをグラフ化すると、次のようになります。 全体の場合と同じく平成30年がピークで、その後少なくなりますが、「高齢者の医療費」は割合から見ても大きくなっています。やはり、早急な対策が必要になります。この傾向は、北海道以外でも同じ傾向の県が多いと思われます。
対策の考察
将来的(2030年以降)に「医療費」は下がる可能性がありますが、「高齢者の医療費」は大きくなる可能性があり、それを社会で負担することになります。また、高齢者以外でも年齢により発症しやすい病気があれば、その年齢付近はその病気に注意すると予防できる可能性があります。そのために、「年齢階級別・傷病別」の「患者数」を分析します。使用するデータは、「患者調査」の「上巻第62表(26年・23年)」・「上巻第63表(20年)」・「上巻第64表(17年・14年)」です。(下図参照:26年版) 今回は、これらのデータをグラフ化しやすいように、ピボットテーブル対応の表にします。(下図参照) この表をもとに、「年齢」による「患者数」の変化を分析します。一般的に、高齢化すると病気になる可能性が高くなるといわれています。しかし、発症する年齢の予想がつけば、何らかの対策をたてることが可能になります。
「悪性新生物(再掲)」・「急性上気道感染症(再掲)」・「神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害(再掲)」について、「年齢階級別・年度別」の「患者数」を下図に示します。
「急性上気道感染症」は1~4歳が多く、「悪性新生物」は70~74歳が多いことが分かります。また「神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害」では、35~49歳が多くなります。
これらは、いずれも何らかの原因がありその結果患者が多くなりました。「感染症」などに対し抵抗力のあまりない1~4歳の子供が、「気管支系の病気」になりやすいので、幼い子供を持っている親は、冬場や「感染症」などが増加したようなときは気を付け、うがいや手洗い等の予防を心がけることが大切です。
また、働き盛りの35歳~49歳前後の人は、仕事や職場での人間関係などで気の滅入ることが多くなると思われますので、職場の上司や同僚及び家族の方が気を使い、気分転換等の行動を進めることが必要です。
「癌」は加齢とともに増加するので、60歳以上は「定期健診」で「癌検診」を行い、早期発見に努めることが必要です。
「患者数」の年度ごとの変化については多少変動がありますが、基本的には増加傾向にあります。しかし、「年齢階級」による「患者数」の傾向は同じです。
このように、年齢によりかかりやすい病気もありますが、加齢とともに病気にかかる確率は高くなります。そこで根本的に病気にかからないためには、健康を維持することが必要です。健康を維持するための方法は多数ありますが、常にそれらを意識して実行することが必要です。これが一番の方法であると確信します。
























